ハードディスクドライブ(Hard Disk Drive, HDD)の開発で功績、数々の賞を受賞

青柳彰彦(高33回)さんが、ハードディスクドライブの開発で貢献され数々の賞を受賞しました。ハードディスクドライブはデータセンター、クラウドシステム、大型コンピューター、パソコン、やBD/DVDレコーダ―などには欠かせない重要部品で、私たちの生活に欠かせないものです。スマホで撮影した動画や写真をクラウドシステムに保存することは多いと思いますが、それらのクラウドシステムの記憶容量の90%以上は今でもハードディスクドライブが占めており、クラウドシステムの記憶容量は年々増加の一途を辿っています。

青柳さんは、現在㈱HGSTジャパン(米ウエスタン・デジタル・コーポレーションの子会社)にて、ハードディスクドライブの開発を行っています。

青柳さんが開発を主導してきた世界初のヘリウム密封型ハードディスクドライブが、二つ賞(2016年度 日本機械学会賞(技術)、及び、第50回 市村産業賞 貢献賞)を受賞しました。

写真左:日本機械学会賞授賞式 2017年4月 於:明治記念館
写真右:市村賞贈呈式 2018年4月 於:帝国ホテル
日本機械学会賞(技術)のメダル
日本機械学会賞(技術)のメダル

1)2016年度 日本機械学会賞(技術)
タイトル:ヘリウム密封型大容量ハードディスクドライブの開発
受賞日:2017年3月
https://www.jsme.or.jp/archive/award/shou94.pdf

尚、2016年度日本機械学会賞(技術)を受賞した案件については、2017年7月26日から8月8日まで「日本の先端科学技術の紹介」として国立科学博物館にて展示され、青柳さんは説明員として入場者に受賞技術の説明を行いました。

https://blog.westerndigital.com/helium-sealed-technology-jsme-medal-tokyo-museum/

市村産業賞貢献賞の賞牌
市村産業賞貢献賞の賞牌

2)第50回 市村産業賞 貢献賞(市村賞は、日本の学術界・産業界における最も著名な表彰の一つ)
タイトル:ヘリウム密封型大容量ハードディスクドライブの開発
受賞日:2018年3月
https://www.sgkz.or.jp/prize/industry/50/document_06.html

また、青柳さんは、2019年6月に母校の東京工業大学の企業社会論の講義の一環として、ハードディスクドライブの開発に関する講演を行いました。

https://educ.titech.ac.jp/bio/news/2019_08/057782.html

青柳さんによる講演 2019年6月 於:東京工業大学 すずかけ台キャンパス
青柳さんによる講演 2019年6月 於:東京工業大学 すずかけ台キャンパス

ハードディスクドライブの内部に搭載しているディスクは1分間に7,200回転し、その回転により内部の空気は乱流状態で激しく動き回ります。この激しい流れに起因するディスク振動を抑えるため、ディスクの厚さはある程度の厚さにする必要があります。ここで、ハードディスクドライブの内部環境を空気からヘリウムに置換すると、ヘリウムの密度が空気の1/7と小さいためディスク振動を劇的に抑えられ、ディスクの厚さを厚くする必要が無くなります。そこで、ディスクの厚さを薄くし、より多くの枚数を搭載することによってハードディスクドライブの容量を大幅に増大化することが可能となります。
この様に、ハードディスクドライブにヘリウムを使うメリットは絶大であり、ヘリウム密封技術の研究は1980年代からハードディスクドライブメーカー各社で行われていましたが、ヘリウムは最も漏れやすい物質の一つであるため密封化技術のハードルは非常に高く、製品化には至りませんでした。
青柳さんはこのヘリウム密封技術の開発を2004年から主導し、2013年に世界初のヘリウム密封型ハードディスクドライブの製品化に成功しました。

ちなみに、ヘリウム密封型ハードディスクドライブは過酷な環境でも動作するため、世界初のブラックホールのイメージ化に成功したEvent Horizon Telescopeプロジェクトでも、高度3,000メートルを超える位置に存在する天文台でのデータの格納に、このヘリウム密封型ハードディスクドライブが使用されました。(従来のハードディスクドライブでは、3,000メートルを超える高度では動作しないためです。)
https://datamakespossible.westerndigital.com/astronomy-data-petabytes-black-hole-image-messier-87/

生成されるデータ量は今後も飛躍的に増大する一方、それらの情報を安価に記憶する装置としては今後もハードディスクドライブが主流で有り続けることが見込まれています。青柳さんはその要求に応えるべく、次世代のハードディスクドライブの開発を現在行っています。